ボールを蹴る日

あるGWから十数年も経つ。
そこで起きたことが楽しくて楽しくて、今でも覚えていることがある。

その日は、国立競技場で友人とサッカー観戦の前に
神宮のフットサル場で、小学校の体育の授業以来だから
ほとんど初めてボールを蹴った日だった。

サッカーウェアを買うお金もないので、
中退した高校のジャージのズボンに
近所のスーパーの子供服売り場で買ったプーマの代表カラーのシャツを着ていた。

それを見かねてか、その日初めて会うキーパー役の方が
アジアのクラブの朱色がかった赤いユニホームを貸してくださった。

フォーメーションを考えて、それを仲間に伝えて、
走って、ボールを追いかけるのが楽しかった。

私の打つシュートはことごとく枠に当り、バコンと音を立てる。
シュートとは、入りそうで入らないものだなぁと
少し悔しかった。

その後、国立競技場で磐田と鹿島を観戦。
当時のJリーグの二強カードだ。

とても暑い日ながら満員のスタジアムで、
着替えもない自分は友人に借りた田○誠選手のシャツに着替える。
自分がそれだけサッカーが下手なのかをフットサルで身にしみた直後だったため
全員のプレーにいちいち感動したものだ。
名波選手の直接FKは美しかった。

帰りの電車でとなりに座った大学生くらいのお兄さんに
「何かいいことあったの?」と声をかけられた。
「フットサルしたんです。すごく楽しいですよ!」と答えると、
お兄さんは「よかったね」と少し笑った。

後になって、なんだか少しだけ疲れたような雰囲気のある人だなぁと思った。


・・・といったことをちょっと思い出しながら、今日もボールを蹴った。
あのころよりうまくなったような、へたになったような
変わらないような、
とにかく気持ちのいい感覚に包まれたような日だった。