記憶の店

風邪をひいて寝ています。
ままならない過去の自分の失敗などを思い出して
妙に弱気な気分になってしまうので、いいことでも書こう。


大学受験も終わった今ごろ、
母と駅前のイ●ーヨー●ドーへ行った。


ここは小さいころから、母が買い物に連れてきてくれたところで
駐車場にある小さなお店で毎回クレープとフライドポテトを買ってもらった。
買い物を終えた帰路はそれを食べながら、家に向かう。

クレープはチョコとナッツと決まっていたが、
ここのフライドポテトは一風変わっていて、太めであまりサクッとしておらず、
いかにも「イモ」という感じだ。
そのイモ感が大好きだった。

小学校のころに着ていた服もだいたいここで買ってもらったものばかりで、
私が自分で好きな洋服を選ぶというより、
「それならアンタにはこっちのほうが似合うわよ」と母が選ぶことがほとんどだった。

「それなら、仕方ないか」と思っていたが、
母のセンスがすごくいやだったという記憶はない。
今となっては「このころ自分が着ていた洋服って意外とよかったな」
と思うくらいだ。

周りの女の子が白やピンクを選ぶなか、
母は自分にカラシ色やグリーン、ブルーを選んでくれた。

白やピンクといういかにも女の子らしい色にも憧れたが、
いざ大人になって自分で着てみると似合わない。

さいころに似合う服を知るというのも、悪くないなぁと思う。


進学に伴い生活用品を揃えようとこの店に母と来たとき、
書店コーナーで「ここに来るのは最後になるかもしれないなぁ」
と不思議な気分になった。

雑誌コーナーの間から、横のベンチで休むおじいさんの姿が
いとおしく感じられ、シャッターを切った。


その後、いつにだったか知らないが、
駅前の開発でこの店はつぶれてしまった。

あれが本当に最後になってしまったのだ。


母が買い物をしている間に預けられたゲームコーナーで大当たりし、
ものすごい量のとコインが出てきたこと。


楽譜を選ぶのが楽しく、また初めて自分でCDを買った音楽コーナー。

遠足前や新学期に選んでもらった靴売り場。

母が面倒くさそうに選ぶ、紳士服売り場。

チョコレートパフェやラーメンを母と食べたレストラン街。

小さなエスカレーター。
人気のない広い階段。


小さなころ、
たまに閉店後のこの店で迷子になる夢をみてしまうくらい自分に馴染んだ店は
母との記憶でもあった。

あの「イモ」なフライドポテトがたまに恋しくなる。